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warehouse 赴くままに乙女ゲーやハマったゲーム等のSSを期間限定で書き綴る予定です(゜Д゜)

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TIGER&BUNNY 夢03-バーナビー・ブルックス・Jr-

多分眼鏡が割りたかっただけなんだと思います(私が



 シュテルンビルトの一角にあるカフェ、そこと自宅とがにとっての全ての世界だった。
 ――虎徹に出会うまでは。
 突然のNEXTの能力を発現させ、自分でどうすることも出来ずに公園にいた時、自らの危険も省みず近づいてきてくれた虎徹には心から感謝している。今も。

 「鏑木・T・虎徹様からご注文頂いたコーヒーをお届けに参りました」

 アポロンメディアの受付嬢にそう告げ、カウンターにコーヒーを預け店に戻ろうとした時、内線で何か話していた受付嬢がを引き止めた。どうやら、虎徹がロビーまで降りてくるらしい。ゴールドステージ、シュテルンビルト一階層の西側に建つアポロンメディアはHERO TVを製作する局を傘下に持つ巨大企業だ。今まで色々な所にコーヒーを届けてきたが、こんな大企業は初めてで、自分がひどく場違いな気がして萎縮してしまう。

 「! 悪かったな、わざわざ持ってきてもらって」

 虎徹と知り合ってしばらくして、の事を虎徹はとニックネームで呼ぶようになっていた。どれだけその名で呼ぶなと言っても聞かないので、諦めた。

 「これもお仕事ですか……」

 知っている顔を見つけて緊張が解けたのか、受付での態度とは一変、砕けた様子で虎徹に答えようとしたが、隣に立つ人間の姿を見つけた途端、固まった。

 「虎徹さん、こちらは?」

 虎徹より少し上の位置から落ちる声、薄い金色の癖のある髪に、眼鏡の奥にある緑色の瞳。赤と白のライダースジャケットにすらりとした長い足。

 「バッ!!」

 見間違うはずがない。毎日テレビを見ていれば嫌でも目に入ってくるこの顔と声。アポロンメディアに所属するヒーロー界のスーパールーキー、TIGER&BUNNYのバーナビー・ブルックス・Jrがそこに立っていた。普通に。

 「お~驚いてる驚いてる、見ろよバニー、あのの顔」
 「女性にそういう言い方良くないですよ、虎徹さん。すいません、この人デリカシーとか分からない人なので」

 どうして虎徹の隣に話題のヒーロー、バーナビーがいるのだとか何でこの人自分に謝ってるんだろうとか変な顔を美形に見られてるとか色々な感情と思考が駆け巡り、頭から煙が噴出しそうになりながら、やっとが口を開いた。

 「眼鏡素敵ですね」

 今思うと、完全に混乱していたのだろう。



******



 「……鏑木さんいい加減笑うのやめてもらっていいですか」
 
 とりあえず落ち着くために来客用のソファに座った三人の内、虎徹がソファの肘掛に顔を押し付け小刻みに震え何とか笑いを堪えようとしていた。虎徹の隣に、よく分かってないバーナビー、そしてその正面にが顔を赤くし、いつまでも笑うことをやめようとしない虎徹を何度も咎めるが、眼鏡の下りがツボに入ったのか、押し殺した笑い声が二人の耳に届き続けていた。

 「だってお前、バニー見て眼鏡っておま……だめだ、笑いすぎて腹痛い」

 一応ここが企業のロビーだと言うことを考慮してか、大きな声を上げて笑いはしなかったが、目じりには笑いすぎて涙すら浮かんでいる虎徹をもう一度睨んでみるが、効果はないようだった。

 「しょうがないじゃないですか! だってこんな大きな会社に配達するだけでも緊張してたのに、今話題のヒーローが出てきたら誰だって混乱します!」
 「混乱するからって眼鏡ほめるのはないだろ~」
 「う……、それは、そうですけど。すいません、眼鏡ほめて」
 「いやそこ謝るところじゃないと思うんですけど……。虎徹さんもほら、いい加減笑うのやめたらどうです。可哀想じゃないですか」

 こんな会話通りすがりの人間が聞いたらなんと思うだろう。眼鏡について謝罪している謎の会話にしか聞こえない。

 「あ~、笑った笑った。やっぱり面白いな、。まあ、一応簡単に紹介しとくか。こいつ、バーナビー・ブルックス・Jr。TIGER&BUNNYのバニーの方。俺のパ……友達な」
 「バニーじゃありません、バーナビーですあと友達じゃないです。どうも、初めまして。さんの事は虎徹さんから以前から聞いてました。最近NEXTが発現して苦労されたとか」

 虎徹の紹介を全て否定してからに向き直り、にこりとバーナビーが笑って見せると特に好きでもないはずなのにどきりとしてしまうのは、彼の容姿が端麗だからなのか、いつもテレビで見ている人間が目の前にいるからなのか。

 「はあ、苦労されたと言うか、現在進行形で苦労していると言うか……」
 「なんだ、まだ不安定なのか?」
 「最近はそうでもないですけど、気が抜けてる時とか家で、コップがバーンとかたまに」
 「確か、さんの能力は爆発を起こすこと、でしたっけ?」

 そこまで虎徹はバーナビーに話していたのか。口では友達ではないと言っていたが、ここまで話しているのだからそれなにり仲はいいのだろう。が自分の力のことをよく思っていないのを虎徹は知っているし、それをあまり知らない人間に言いふらすとも思えなかった。かと言って、何故現役ヒーローのバーナビーを呼んだのかは分からない。

 「説明しづらいんですけど……こう、目で見たり指差したりして爆発しろって思ったり口にしたりするとそこだけ爆発を起こすと言うか……。あ、爆発っていってもそんな大規模なものじゃないんですけど」
 「ふむ……、面白い能力ですね」
 (私はぜんぜん面白くないんです、バーナビーさん)
 「NEXT能力についてはバニーのが詳しいから、何とかなるんじゃないかって来てもらったんだ。で、どうだ? バニー。何かいい案無いか?」

 顎に指を当て、長い足を組んでバーナビーが思案する。本来ならNEXTの専門的機関に依頼するのが真っ先に解決する近道なのだが、あえて虎徹はバーナビーを間に立たせの能力について考えさせる。そこには彼だけが考えている、何か策めいたものがあるようだった。

 「力を見てみないと何とも……ここじゃあれですから、さん、申し訳ないんですけど上まで来てもらえますか?」
 「上?」
 「ええ、ヒーロー事業部の方に」



******



 チェックゲートを抜け、通されたのはヒーロー事業部オフィス手前の応接室。バーナビー曰く、ここは割りと頑丈に作られているし、暴走しても自分が止めるから大丈夫とのことだが、としてはよそ様のものを壊すのは嫌だし、第一こんな高級なデスクやら椅子やら壊しても弁償できる自信がない。そんなことも知らずにバーナビーは振り返り、さあ、どうぞとに力を使うように促してきた。

 「さあどうぞと言われても……。鏑木さん、私……」
 「大丈夫だって、いざとなったら俺もいるし。だって怖いだろ? いつまで経ってもコントロールできない力が自分の中にあるってのはさ」
 「それは、確かに……。ええと、それじゃあ、いきます」

 虎徹に背中を押され、頷くと出来るだけ被害が少なそうなものを探す。デスク、椅子、窓ガラス、ドア。数々の備品の中、が目をつけたのはデスクの上に乗る、ガラスで出来た灰皿だった。

 「あれでやってみます」
 「分かりました、どうぞ」
 「いきます! 大爆発はしないでね……よし、灰皿爆ぜろ」

 灰皿を指差し、が呟くと灰皿の中心に光が集まりその光が弾けると同時に、硬そうな灰皿が粉々に砕け散った。

 「これは……」

 見たことの無い能力だったのか砕け散った灰皿を見つめながら思わずバーナビーは呟く。自分や虎徹の持つハンドレッドパワーや他のヒーローが持つ能力とも違う力に驚きを隠せない。彼女の能力は、ピンポイントで爆発を起こす事が出来る能力。彼女の口ぶりからしても規模や、範囲などもコントロールできそうだった。
 これがもし、敵だったとしたら。その気になれば銀行強盗の金庫を爆破したり、人すらも爆発させてしまうかもしれない。

 「バニー、あんまり深刻な顔するな。が不安がる」

 虎徹がそっとバーナビーに耳打ちをし、顔を上げると砕けた灰皿の前で、不安そうにこちらの様子を窺うの姿が見えた。その様があまりに辛そうでついの方へと手を伸ばし、肩へと置いてしまう。

 「え」
 「あ」

 お互いに予想外の行動だったのか驚きの声が重なる。まさかバーナビーが肩に手を置かれると思っていなかったと、手を置くつもりの無かったバーナビー。二人の視線がかっちりと合う。

 「い、いい爆発ですね! 貴女なら爆破解体現場で活躍間違い無しですよ!」
 「おいバニー、お前それは……」

 肩に手を置いてしまったことを誤魔化そうと無理やり話題を変えようとしてみたが、それはどうやらの怒りの導線に火をつけてしまったらしく、俯いたは拳を握り、わなわなと震え始めていた。
 の変化に気づいた虎徹が慌ててフォローを入れようとしたが、時既に遅く、再びが顔を上げたときその色は怒りに染まっていた。

 「! 落ち着け! バニーは悪気があって言ったわけじゃないから! な!?」
 「……ろ」
 「ちょ、バニー謝れ!早く!」
 「眼鏡爆発しろ!」

 最初にほめた眼鏡が、音を立てて割れた。それは、それなりの関係を築けそうだったバーナビーとの間にも同じことだった。

 「人が真剣に悩んでるのに爆破解体現場で活躍とか馬鹿じゃないの!」

 このときばかりは虎徹もに全面同せざるおえなかった。
 ちなみに虎徹はバーナビーと両人に同じ年頃の友達が出来るかもしれないと二人を会わせたのだが、その目論見は眼鏡の割れたレンズと共に崩れ去ってしまった。

 「虎徹さん、僕なんであんなこと言ったんでしょうか」
 「知るか、俺に聞くな」

 バーナビーと、お互いに普通に友人として付き合える日は、来るのだろうか。

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