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warehouse 赴くままに乙女ゲーやハマったゲーム等のSSを期間限定で書き綴る予定です(゜Д゜)

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戦国BASARA倉庫-01

前サイトでやっていた戦国BASARA夢(伊達メイン・未完)を倉庫から引っ張り出し。
トリップものです。





 前略、母上様。この私がいったい何をしたというのでしょうか。
 ただ道場の帰りに小腹が空いたのでコンビニに寄って大福を買って行儀悪く店の前で食べたのがいけなかったのでしょうか。それとも弓構えの時に集中しないで今日の晩御飯何にしようかな、作るの面倒だからとお惣菜で済まそうとしたからですか。
 けれど、けれども神様、こらはあまりにも酷い仕打ちではないでしょうか。いくら神聖なる弓道場で晩御飯の事を考えていたからって…………。

 「……これなんて名前の戦国村?」

 、年は二十歳と一つ。どこにでもいる女性である。
 物心付いた頃から弓道に親しみ、趣味は大福探訪。幼い頃から親しんでいた弓道に夢中になり気が付けば恋の一つもまともに出来ずに子供達に弓道を教えるまでに成長していた。よく言えば強い女、悪く言えば青春無駄殺し。
 その至って普通のが今いる場所は、ほんの五分前に寄った明るいコンビニエンスストアの光も無く、アスファルトの地面も、楽しげに歩く人々の姿もない。目も開けていられないほどの強い風が吹いたと思った次の瞬間、が立つ地は様変わりしていた。
 そこにあったのは、鼻を突くあまり嗅ぎ慣れない強い鉄のような匂いと、時代錯誤もいいところの甲冑姿の人々と、飛び交う怒号と、化け物を見るような瞳でこちらを見る目、目、目。

 「えーっと?」

 肩からずり落ちそうになる和弓を入れた布袋と女性の必需品を盛りだくさん入れた鞄を再度持ち直し、ざわつくコスプレ-だと思われる-人々に声を掛けた。

 「お、お仕事お疲れ様ッス。大変ですね、暑そうって言うか臭そうって言うかとにかく大変そうですね!」

 にこり!と笑って割りとフレンドリーに決めて見てもこちらを見る男達に言って見せても返事どころか新たなざわめきが起こるだけだった。

 「お、おい喋ったぞ」
 「ひぃ、妖怪が喋った!」
 「誰か殿に伝令を!妖が、妖が出たぞ!」

 言うこと欠いてアヤカシ。何とか戦国村だと思っていただったが、この反応、火薬の匂いそして鉄の匂いに似た足元に広がる緋い、緋い、血溜まりとおびただしい数の人にそうではないと本能的な部分が告げた。
 演技で転がっているものかと思ったが、そうではない。兜の下から覗くソレは、生きている人間のものとは到底思えなかったのだ。

 (うそ……何よ、これ……)

 自分の靴が血溜まりに沈んでいく感覚に囚われる。立ち登る血の匂い、目の前には刀、槍など武器を構えた男達。巻き上がる風が埃と硝煙を巻き込み****の体を包む。頭では到底理解できない状況なのに足は震え声を出そうにも口は戦慄いて声どころか呼吸さえ上手く出来ない。
 ここは自分が生きていた場所ではない。安穏と過ごしていた自分も、家族もここにはいない。
 気が付いた時には肩から下げた鞄を振り回し、叫び声を上げながら駆け出していた。何処へなど考えてる思考などない。ただこの場所から一刻も早く立ち去りたかった。
 震える足を叱咤し、走り出す。しかし足が上手く動かない。けれどただ何処かへ、此処ではない、何処かへ逃げたくて走り出す。
 誰かが夢だよと、悪戯だよと笑ってくれることを祈って……。



    ****



 温い戦だ、そう戦場を見下ろし、崖の上に立つ男は思っていた。大きな三日月を模したような飾りがついた兜に漆黒の鎧。兜から見える瞳は一つ。右目に眼帯をはめたこの男は、奥州を纏める伊達政宗、その人だった。
 一つしかない瞳から発せられる光は冷めた色を宿していた。
 自軍の色である空よりも深く、夜の海よりも明るい青色の打掛のようなものを風にはためかせため息を一つつく。

 「Dull!温い戦だぜ」

 呟く言葉には南蛮の言葉が混ざる。戦況は圧倒的に伊達軍が優勢。いつもなら先陣をきって走り出す政宗だが、今日はその出番もなさそうだ。
 腕を組み、つまらない、つまらないと繰り返す主君の背中を見つめ、その後ろに控える左頬に傷を持つ男は密かに安堵の息を吐いた。
 第一合戦で御大将自ら出るだけでなく、敵の真ん中に突っ込み命のやり取りを楽しむなどいいわけがない。それも含めこの男は主君を理解はしていたが、その結果眉間に刻まれた皺が消えることはなかった。
 眼下に広がる合戦に、不意に動きが見えた。敵味方入り混じって戦っていたはずなのに、あからさまに動揺と見える動きを見せ始めた。しかも相手側だけではなく、圧倒的有利であったはずの自軍にもその動揺は広がっていたのである。

 「おい小十郎!」
 「は……」

 政宗に呼ばれ小十郎と呼ばれた男、伊達家家臣片倉小十郎は隣に立ち、すぐに政宗の言わんとしていることが分かった。

 「これは……政宗様」
 「小十郎、どう見る?」

 視線は慌てふためく両軍。視線を外さずに隣に立つ小十郎に問うた。

 「両軍の慌てよう、何か予期せぬ事が起きたのではないかと……」
 「Ha!何だか面白くなってきたじゃねえか、なぁ小十郎?」
 「政宗様、お待ちください!相手の罠かも知れません!あまり軽々しく前に出てはいけないとあれ程……」
 「やれやれ、またいつもの小言か。いい加減聞き飽きたぜ」
 「政宗さまっ!」

 言うやいなや政宗は更なる小十郎の小言から逃れるように馬に飛び乗り、崖から飛び降りた。
 猛然と走り去る政宗を驚いた様子も無く、深く重いため息をつき、自分も飛び乗りその後を追った。この突然の行動も、どこか少年の姿を残したままの主君を小十郎はよく理解していた。
 合戦を割るように政宗の馬は走り抜けていく。敵から見れば敵の総大将、味方から見れば頼れる筆頭伊達政宗の姿があると言うのに誰一人としてその姿を目に映してはいなかった。
 ただざわめきのように所々から洩れる囁きに、政宗は眉を顰めた。

 『妖が出た』と。

 (Ghost?相手の罠……ってことは無さそうだな。温い戦だと思ってたが、何だか面白くなってきたじゃねえか!)

 政宗の一つしかない瞳に宿っていた冷めた光が別の色に変わる。何か子供が新しい玩具を見つけたような、そんな純真で無垢な光。
 この先には政宗を楽しませる何かがある、そう直感で告げていた。




    ****



 分けも分からずに走り回りたどり着いた先は鬱蒼と茂る森だった。血の匂いを逃れ、自分を指差し何かを叫び、今にも襲い掛かってきそうな人々を逃れ此処まで走ってきたはいいが、一体これからどうすればいいのか。
 ふらりと足が疲労を思い出したかのように揺れ、そのまま崩れ落ちるように大きな木に背を預けた。木が、まるで座ることを許さないとでも言うようにの体を支えた。ここは安全ではない、座り込めばすぐにでも死ぬぞ。そう、木に言われた気がした。
 ざあ、と風が吹き抜けていく。張り詰めている緊張を解そうとしているのか、暗い森が更に恐怖を煽るようにしているのかも分からない。頭の中にあるのはたった一つの感情、恐怖。
 無意識に和弓の袋と矢筒を手繰り寄せ、ぎゅ、と強く握り締める。人を傷つける為の弓ではない。あくまで自己を高め、精神を高めるための競技としての弓道。穿つのは人ではなく、的。
 それでも握り締める。この恐怖を少しでも和らげようと、握り締めた指の痛みでこの悪夢が覚めてしまえと心に願いながら。
 そう遠くもない距離から、何か音がする。先ほどの合戦の男達かと体を硬くし、上手く動かない指を必死に動かし袋から和弓を取り出す。その間にも、音はどんどんと近づいて来ている。

 (動け!動け!動け!!)

 動かない指に怒ってみても、張り付いた指は動かない。矢筒のファスナーのつまみがうまくつまめない。
 がさり、と音がした。そして何かの生き物の息遣い。

 「っ!!」

 何かをしなくては、と弦を引き矢を番えられていない弓を生き物の方に向けた。

 「Ah?何だ?」

 聞こえてきた声にびくりと体が震えた。頭の上から聞こえてきた声は独特の発音をしていた。
 顔は上げられない。ただ視線だけを上に上げ、それにならうように弓を声の先に向けた。
 そこにいたのは大きな三日月のような飾りを模した兜に、右目に眼帯をはめた男。はその男の容姿より、腰に差していた六本の刀に目を剥く。先ほどの合戦場でたくさんの男達が持っていたそれよりも特異な形をしている刀達。頭によぎったのは、その刀で自分の体を貫かれる姿。

 死にたくない。

 自分は少し前までいつもと変わらない生活を送っていたはずだった。高校を出て、大学に行き、道場に行き、弓を引いてコンビニエンスストアに寄り大好きな大福を頬張りながら家に帰る。そんな日々だったはずなのに。

 死にたくない。

 この代わり映えの無い世界に飽きていた節はある。ある日突然異世界に飛ばされ大活躍する想像だってした事はある。けれど、それが現実になるなんてことは無かった。想像の世界では自分が死ぬことなど考えたことなど無かったのだから。
 自分が今立っているこの場所は紛れも無い現実で、この目の前に立つ男も夢や想像の産物ではなく、本物の人間。

 死にたくない!!

 心臓を脈打つ音がの心を逸らせる。構えた弓が主の動揺に答えるようにがたがたと震えだす。

 「おい、アンタが……ってオイ!」

 男が声を掛けようとした瞬間は茂みの中に飛び込んだ。ここではない何処かへ、逃げるために。
 自分の顔を見つめ走り出した女に、男―伊達政宗―は不敵な笑みを浮かべた。

 「この奥州筆頭伊達政宗から逃げようとするなんざ、いい度胸してるじゃねえか」

 低い声で呟き

 「Tagでこのオレから逃げようってか?ha!面白れえ!西海の鬼じゃねえが、このオレがtaggerなんだ。逃げ切れると思うなよ!」

 両足で馬のわき腹を蹴り、女――が飛び込んだ茂みへと馬を飛び込ませる。その目には、先ほど宿していたあの光は、未だ消えてはいなかった。



2007/08/22

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