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warehouse 赴くままに乙女ゲーやハマったゲーム等のSSを期間限定で書き綴る予定です(゜Д゜)

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-コードギアスLC-ライナナ

ナナリィィィィィィィィィィィィ!!






 白いテーブルクロスの上に紙で出来た色とりどりの花が並ぶ。
 一枚の紙を折ることで出来る花は一人の少年と、一人の少女が折ったものだった。

 「ライさん、ここからどうしたらいいんでしょう?」
 「……後ろに折り返して……そう、上手に出来たよナナリー」

 瞳を閉じたままの少女、ナナリーはライの言葉に頬を少しだけ染め、嬉しそうに微笑む。日課になりつつライによる折り紙指南のお陰か、最初はほぼ無表情、無感情な様を見せていたライも大分表情が和らいできている。キッチンでお茶とお菓子の準備をしている咲世子にもその微笑ましげな光景に自然と笑みが零れていた。最近兄ルルーシュが多忙らしく、あまり顔を見せられなくなり寂しそうにしているナナリーが今は実に楽しそうに過ごしている。最初は得体の知れない人間だと咲世子も警戒していたが時間が経つにつれその警戒感もなくなっていった。ルルーシュと似ている風ではあるが、ルルーシュには似ていない。初めてライと会った時ナナリーは兄であるルルーシュとライを間違えていたが今ではルルーシュとライを間違える事は無い。

 「これは何のお花ですか?」
 「バラだよ。この前は桜だったから、今度はナナリーのよく知ってる花にしてみたんだ」
 「バラ……。ふふ、嬉しいです、ライさん」
 「……ん」

 満面の笑みをナナリーがライに向けると視線を逸らし、照れくさそうに小さくライが返す。微妙にぎこちないやり取りではあるがこれでも大分ライのとっては進歩だった。スザク曰く無意識に人を遠ざけている、拒絶していると評される彼にとって素直に相手の言葉を受け取り、返すだけでも大きな進歩だと言える。ナナリーもまたライの人慣れのしていない性格や、意外と照れ屋だと言う事を知っておりそれ以上は突っ込まない。ミレイあたりならば『聞こえなーい』などとライをからかいそうだ、そんな様子を想像し、一人笑う。
 照れ隠しか次の折り紙へと手を伸ばしているライに向け、ナナリーはふと疑問に思った事を口にしてみることにした。

 「ライさん、このバラは何色ですか?」
 「……えっ!」

 バラには赤、白、黄と色がある。ライの事だろうから実際にある色の折り紙で折っただろうと推測し、折れたばかりのバラをそっと胸の前で抱きしめながらナナリーが尋ねると、すぐ答えられそうな質問にも関わらずライは言葉に詰まった。

 「ライさん?」
 「えっと……、は、灰色、かな?」

 あからさまに嘘を付きましたと言わんばかりの答えにナナリーの眉が困ったように下がる。ライは、嘘を付いている。何故バラの色で詰まるのかは分からないが何事か考え、困惑、いや照れているようにも取れるライの雰囲気にナナリーは怪訝そうな顔をし、閉じられた瞳でじっとライの顔を見つめた。
 視線に耐え切れず折り紙を手に取ったライは慌てた様子で何かを折り始めるがナナリーの意識はライから動かない。どうして嘘を付くのか、どうして慌てているのかナナリーには分からなかった。

 「ライ様、そのように照れなくてもよろしいではありませんか」

 場の空気をすかさず読んだ咲世子がトレーに二人分の紅茶を載せ笑いを殺しながら近づいてくる。咲世子の顔を見、口元を手で覆ったライが視線で咲世子に勘弁してくれ、と語っても微笑み一つでそれを一蹴した咲世子はカップをナナリーの横に置きつつ、わざとらしい声で言う。

 「ナナリー様、バラの色は白ですよ」
 「白、ですか? でも咲世子さん、白のバラだとどうしてライさんは教えてくれないんでしょう」
 「ああ、それはですねぇ……」
 「さ、咲世子さん!!」
 「花言葉に関係あるのだと思いますよ?」
 「花言葉……?」
 「……っ」

 にやり、と実に人の悪そうな顔でライを見て咲世子が笑うと、覚悟を決めたのかぐったりと深く椅子に座り込んだライがナナリーの手にそっと自分の手を重ねゆっくりと言葉を紡ぐ。

 「……ごめん、ナナリー。その、折った後に気が付いたんだ、色に。でもその……深い、意味は無い。そう、無い……んだ」

 消えそうな語尾に最後までなんとか言葉を乗せてライがナナリーに告げると、未だ意味のあまり分かっていない様子のナナリーは首を傾げ乗せられているライの手の上へ自分の手を重ねる。いつもはひんやりとしているライの手が、今日は熱かった。手と同じようにライの顔も赤くなっているのを咲世子は見ていたがこれ以上は酷か、とナナリーにライの様子は言わない。

 「本当に、ごめん。ルルーシュ、わざとじゃないんだ、狙ったわけじゃないんだ」
 「お兄様がどうかしたんですか?」
 「俺がどうかしたか、ライ」
 「!!」

 ナナリーの声と重なるように低い声が部屋に響く。振り向くとあからさまに機嫌の悪そうなルルーシュがライを睨みつけていた。
 扉にもたれかかるようにして腕を組むルルーシュはナナリーに優しくただいま、と声をかけるとすぐにまたライの方を睨む。正確にはライの手を睨みつけている。

 「……あ」

 ナナリーの手の上に重ねられた自分の手、そして更に上に乗せられているナナリーの小さく、白い手。誰が見ても重度のシスターコンプレックスのルルーシュがこの状況を機嫌よく見るはずはなく、大股で近づくとナナリーの席の右下、ライの正面へと腰を下ろす。体格は自分と同じぐらい、しかし体力、運動神経などは圧倒的に勝っているライだが蛇に睨まれた蛙のように身動き一つすらできないでいた。何か得体の知らない圧力じみた力をルルーシュの背後に感じ、そっとナナリーの手を離すが、ルルーシュの視線は依然としてライから外れることはない。

 「ル、ルルーシュ」
 「なんだ」
 「……いや、なんでも無い」
 「フン」

 なんともいえない空気にナナリーが首をかしげ、咲世子は笑うのを必死で堪える。恐らくこの中で白のバラの花言葉を知るのは咲世子だけなのだろう。テーブルに咲く折り紙の花達を忌々しげに見下ろしながらルルーシュが鼻を鳴らし、雰囲気に不安そうな表情を見せるナナリーに気づくと即座に優しげに声をかけ曇った表情から笑顔へと変えていた。一先ずルルーシュの意識が自分からナナリーに移ったことに安堵したライはすっかり冷めてしまったカップへと手を伸ばし、口をつける。
 からからに乾いていた喉に適度に苦い紅茶が潤していく。半端の無いルルーシュの気迫を越えた殺気のこの場をどうしたものかと考えるが戦略的なことを考える事を得意としているライにとってもこの場を切り抜けるのには少しだけ時間が必要そうだった。


 白いバラの花言葉――私こそあなたに相応しい。

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