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warehouse 赴くままに乙女ゲーやハマったゲーム等のSSを期間限定で書き綴る予定です(゜Д゜)

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うたの☆プリンスさまっ♪-真斗-

一番好きなキャラはレンです!



 誰もいない教室に紙をめくる音だけが響く。

 「うむ。七海は今日も元気そうだ」

 満足そうに頷いて、聖川真斗は一人微笑む。手には、一冊のノート。これは彼のパートナー、七海春歌と交換している情報ノート。お互いにあまり口の回らない二人はこうして曲について思った事を文字にして交換している。本人達は情報交換の為と言うが、それははたから見れば交換日記以外の何ものにも見えなかった。
 七海からのノートにはいつも決まってページのはじに音符を模したキャラクターを書いている。本人曰く、おんぷくんなるものなるらしい。ただ音符に顔を書いただけのものなのだが、聖川の脳裏にはそれを一生懸命書いている七海の顔が浮かんでいるらしく、微笑みが深くなっていく。どちらかと言えばあまり表情を表に出さない方だったのだが、七海と関わってからの聖川は誰が見てもおかしい、否面白い状態だった。

 「マサ、七海のこと好きなの?」
 「なっ!?」

 ある日、真顔で同じAクラスでライバルでもあり友人でもある一十木音也が尋ねた時、本人は冷静に、かつさりげなく

 「何をバカなことを言っている。彼女は俺のパートナーであり、素晴らしい作曲家だ。どこをどう見ればそんな風に見えるのだ」

 と、答えたつもりだったのだが思っていた以上に動揺は大きかったらしく、ところどころ詰まった上、その頬には朱が差していた。

 「どこをどう見てもマサは七海の事好きだと思うんだけど……。だってほら、今も嬉しそうに交換日記とかつけちゃってるし」
 「交換日記!?」
 「え。自覚無かったの? だってどうみても交換日記じゃん、それ」
 「な……こうか……にっ!?」
 
 動揺が激しくなりすぎて既に言葉になっていない聖川を一十木が珍しく人の悪そうな笑みを浮かべ口をパクパクと動かしている友人の様子を窺う。交換日記と指摘された時から聖川の頭の中には、一十木が考えている斜め上を行っていた。

 (交換日記……俺と七海が交換日記……。確かに七海から返事が来ると嬉しい。あちらにノートが渡っている時など次はどんな事を書いてきてくれるのか、俺はそれにうまく返事を返せるのかなど楽しみにしている節もある。あるにはある。が、それは断じて好意などではな……。いや、好意がないわけではない。彼女は俺のパートナーだ。それにあのような女性に嫌悪を抱けるはずが無い! だがそれは友人としての好意で一人の女性としての好意では……)
 「マサ? おーい、マサー?」

 眉間に皺を寄せ葛藤しはじめた聖川に光速の速さで置いていかれた一十木が現実に引き戻そうと声をかけるが、聖川が戻ってくる様子は無く、ただ難しい顔をしている友人の顔を眺めるしかすることがなくなってしまった一十木は何気なく窓の外を見る。
 すると

 「あ、七海だ」
 「なんだと!」

 どんなに自分が呼びかけても帰ってこなかった聖川が現実に一瞬で帰還した。
 一十木の視線の先を見ると、言葉の通り七海はいた。いたには、いたのだが。
 街路樹の下を大量の紙の束を抱えている彼女は一人ではなかった。

 「神宮寺……!」

 呼び止められたのか七海が立ち止まり振り返るとそこにいたのは聖川が一番七海に近づいて欲しくない人物、Sクラスの神宮寺レンが軽く手を上げながら七海に近づいていた。何か話しているのか、ここからでは分からない。神宮寺の影になってしまい七海がどんな顔をしているかがわからない。
 神宮寺は七海に何を話しかけているのか、七海は困っていないだろうか。押しに弱い彼女のことだ、神宮寺が強引な手段に出れば抵抗できないかもしれない。
 そう考えるだけでいてもたってもいられなくなった聖川は勢いよく立ち上がり、珍しく荒々しい動きで椅子を蹴り飛ばしながら教室を後にした。行く先は、聞かずとも分かる。

 「やっぱり七海のこと好きなんでしょ、マサ」

 呆れたような、苦笑の含まれた一十木の呟きは聖川には届かなかったが、七海と神宮寺の元へと辿り着き背中に七海を庇いつつ神宮寺を睨んでいる聖川の顔と行動の速さを見れば、答えを得ずとも分かったような気がした。

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