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warehouse 赴くままに乙女ゲーやハマったゲーム等のSSを期間限定で書き綴る予定です(゜Д゜)

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うたの☆プリンスさまっ♪-翔-

(*´Д`*)HTMLとかなにそれおいしいn





 俺が春歌を好きになることは、必然だっんだろうと思う。今考えれば、だけど。
 俺のパートナー、七海春歌の初対面でもイメージを言えば『俺様のことを小学生だの中学生だの言ったり失礼。あとよく分からないけどなんかすごい奴で、俺の初めて出来た家来』だった。具体的に言えば普段はおっとり……って言うかすげえ人見知りで、内気。なんでこいつが早乙女学園に入れたのか分からないぐらいで。でも、あいつの作った曲を聞くとそんなイメージはぶっ飛んだ。 

 「翔くん!」

 今日もあいつは嬉しそうに新しい曲が出来たと楽譜とCDを持ち俺のところに駆け寄ってくる。なんつーか、あれだ、留守番で待ってた犬か。
 まあ、そんなこいつが俺は気に入ってたりするんだけどな。なんてったって俺様に初めて出来た家来だしな!

 「お、新しい曲できたのか?」
 「はい! 翔くんに一番に聞いて欲しくて!」

 あーもう……。俺に一番に聞いて欲しいとかそういうこと簡単に言うのやめろよな! お前は無意識なんだろうけどこっちはそういうこと言われる度に心臓がバクバクだって! いや別に嫌とかじゃねーぞ。むしろ嬉しい! うん。
 後ろでにこにこと嬉しそうに付いてくるあいつに気づかれないように見ながら俺たちは入り慣れたレコーディングルームへと向かった。
 レコーディングルームに入ると春歌はいそいそとCDをセットし、再生ボタンを押す。少しの沈黙の後、ピアノの音が流れ出す。
 ああ、本当に春歌の曲は凄い。
 内気な癖に、曲は自信に溢れてて、人見知りな癖に誰もがはっとする程存在感のある曲を作る。一時期はこいつのパートナーが俺で大丈夫なのか、俺がこいつの才能に付いていけるのかなんて考えたこともあったけど今はそんなことは思わない。春歌は俺の為に、俺だけの曲を作ってくれてる。それなら俺はそれに全力で答えたい。

 「どうですか?」
 「相変わらずとんでもないよなぁ、お前」
 「え! あ、あの。だめだった……?」
 「違うって! 今のはいいって意味。ったく、お前はもうちょっと自分に自信を持て!」
 「はあ」
 「なんだその気の抜けた返事は!」

 曲はいつだって自信満々の癖に作曲した本人がこれだからなぁ。なんか、自分がどんだけ凄いか分かってない節があるんだよなこいつ。

 「で、この曲は……」

 なんだか分からない、そんな顔をしてるあいつの思考を切り替えさせる為に口を開くと速攻で

 「はい! 翔くんの為の曲です!」
 
 ……だから、やめろ。そのうれしそうな顔。なんだその満面の笑顔! なんだ、試してるのか? 俺のこと試してるのか!? ま、負けねえぞ俺は! そ、そんなちょっと頬染めてにこにこしたって俺は、絶対、負け……

 「……」
 「翔くん?」

 だああああ! だからそうやって俺の顔を下から覗き込むのをやめろ! 小首を傾げるな! 顔赤くなってんのがバレるだろうが!

 「……まあ、いいんじゃねえの。俺は……好きだぜ、その曲」
 「本当ですか!」

 ああもう無理だこれ。こいつ人見知りの癖に作曲とかのこととなると途端に積極的になる。無防備って言うかなんて言うか今も満面の笑みでこっち見てるし。俺が今どんな気持ちでいるとかぜんぜん考えてないんだろうな、なんか色々鈍感だしな、春歌は。
 赤い顔を見られないように被っていた帽子を少しだけ深く被りなおし、俺は努めて冷静に曲の中で気になったところを話した。その間も、俺の顔は赤くて、心臓は早鐘を打っていた。
 今までの俺なら、心臓がこんなに早く打つなんてことがあったら発作かって心配になってたけど、今は違う。これは俺の心臓がおかしいわけじゃなくて、純粋な反応なんだと思う。こいつへの感情の正体っていうか、気持ちより先に心臓が気づいたって言うか。
 好き、なんだと思う。春歌の事。
 家来だから守ってやらなくちゃとか、相棒だからとか、パートナーだからとかじゃなくて、一人の女の子として俺はこいつのことが好き。

 「春歌」
 「はいっ!」
 「あのさ、俺」
 「はい」

 あの時の俺はどうかしてたんだと思う。今の今まで曲の事話してたって言うのになんであんなこと言ったんだろうな。思考より感情が先走ったのかな。

 「好きだ」
 「ありがとうございます!」

 ん?
 あれ?

 「翔くんの為に作った曲なので、好きだっていってもらって凄く嬉しいです! また手直ししたら一番に聞いてくださいね!」

 忘れてたよチクショー。こいつはそういう奴だったよ! 作曲に関しては鋭いのに自分のことになると鈍感な奴だったよ! いや、って俺も何言ってんだ!? す、好きとか。落ち着け、とりあえず落ち着け、俺。
 胸に手を置いて深呼吸を一、二、三。よし、ちょっと落ち着いたぞ。

 「翔くん、大丈夫ですか? もしかして調子、悪いですか?」

 胸に手を当て深呼吸を繰り返す俺に春歌がたずねる。だ・れ・の・せ・い・だ・! ……いや、春歌のせいではねーよ。どっちかっつーと俺の勝手な先走りなんだけど。

 「なんでもねーよ。お前心配しすぎ。俺様がそう簡単に調子悪くなったりするかよ!」
 「あ……それならよかったで……」

 ぐう。

 「ん?」

 今なんか、音が……。

 「あ、あああああ」

 音の方を見ると春歌が顔を真っ赤にして俯いていた。成る程、音の正体はこいつの腹からか。

 「春歌、お前昼飯は?」
 「えっと、まだです」
 「朝は?」
 「ピアノに向かっていたら登校時間になってしまって……」

 朝からなんも食ってないってことじゃねーか! 本当曲のことになると飯とか睡眠とかどっかぶっ飛んでいくなこいつは!
 腹が鳴ったのが余程恥ずかしかったのか俯いてしまってる春歌をちらりと見ると、俺は勢いよく春歌の手を掴みレコーディングルームを飛び出した。

 「し、翔くん!?」

 俺の突然の行動に驚き、大きな目を更に大きく見開いた春歌が俺を呼ぶが、俺はその声を無視してどんどんと廊下を進む。向かう先は、食堂。

 「あのなぁ、お前が作曲好きなのも、俺の為に曲作ってくれんは、すげー嬉しい。でもそれでお前が倒れたらなんにもなんねーだろーが!」
 「ご、ごめんなさい。翔くんに一番に聞いて欲しくて……」
 「それは分かってるし、嬉しいと思ってるけどお前が倒れたら意味ないだろ! お前が倒れたら俺……」

 って待て、おい待て。それ以上は言うな。そういうのはもっとこう雰囲気とかそういうのが大事だろうが! 腹鳴らしてる女の腕掴んで言う台詞じゃねーよ!

 「……ッ! いいから、飯食いに行くぞ! んで放課後練習!」
 「は、はい!」

 よし、よく堪えた俺。
 二回とも勢いで告白って言う最悪の状態は免れた。いや、今言ったとしてもこいつに通じるかどうかは別として。

 「あの、あの!」
 「何だよ」
 「ありがとう、翔くん」
 「……バーカ。当たり前だろ、俺たちはパートナーなんだから」

 今は、こうして誤魔化すことしか俺には出来ない。でも、いつか、パートナーじゃなくて恋人だからって、言える日が来るといいけどな。
 いやまあ、そのまえにこの超鈍感な俺のパートナーに男として意識してもらう為にがんばらないとだけどな!
 だから覚悟しとけよ、春歌!


 2011.0815

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