忍者ブログ

warehouse 赴くままに乙女ゲーやハマったゲーム等のSSを期間限定で書き綴る予定です(゜Д゜)

RSS TWITTER RssTwitter

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

LOSTCOLORS―ラウンズ編01―

中二病祭り1

>>目次










世界最強とも言われる騎士達がいる。神聖ブリタニア帝国に属するナイトオブラウンズと呼ばれる十二人の騎士達の事である。それぞれに専用ナイトメアフレームと専属開発チームが付く破格の待遇で迎えられる彼らは皇帝の直属。それは例え皇帝の血を継ぐ皇族とて命令することの出来ない、ある意味軍の中では特殊な地位につくもの達。
ナイトオブワンを筆頭騎士に十二ある席は現在全て埋まってはいないが、皇帝の威光を示すには充分な数は揃っていた。そんなナイトオブラウンズの中に隠された騎士、影の騎士、首無し騎士デュラハンと呼ばれるナイトオブラウンズがいる。十二ある内の席に何処にも属さない、しかし正真正銘のナイトオブラウンズである彼を知る人間は皇族や同僚のラウンズ以外、あまり知られていない。

(……)

頭の横で規則正しい音を刻む機械音を聞きながら、ナイトオブサーティン、不吉な数字の騎士がゆっくりと目を開く。空ろだった瞳に光が戻り、体中に張り付いているコードを引きちぎらないようにしつつナイトオブサーティン、ライは体を起こした。
今日は週に一度の『メンテナンス』の日。体に不調をきたした事は一度も無いのだが、主である皇帝から命ぜられては抗いようは無かった。元々はただの一学生だった自分がどうしてナイトオブラウンズになっているのか、もはや彼にとって遠く懐かしい記憶になってしまっているが、彼はかつで記憶喪失だった。覚えていたのは自分の名前だけ、あとは何も覚えていない状態である場所に迷い込んだ彼はそこで一月近くを過ごした。
ブリタニア帝国の植民地、エリア11。旧名日本国。そこで過ごした日々の事は鮮明に覚えている。破天荒でお祭り好きだけど素性も知らない自分を世話してくれたミレイ。ミレイ率いる生徒会のシャーリー、リヴァル、ニーナ、カレン、スザク、ナナリー、ルルーシュ。目を閉じれば今でも思い出す、彼らと過ごした楽しかった日々を。
始まりがあれば、終わりが来る。
楽しかった日々は、ある日突然終わりを告げた。祭りの最中に乱入してきた無粋なテロリストによって。それまで徐々にだが自分の事を思い出していた彼は全てを取り戻した。記憶と、力を。
かつて守る為に使い、結局は失ったこの力で再び守ろうとし、そして彼はまた失った。自分の居場所を。
居場所を失った彼は租界を彷徨い自らが眠れる場所を探した。あれほど思い出したいと思っていた記憶は彼を苦しめ、追い詰め、責め続けた。
吹き付ける風の中、彼が辿りついたのは高層ビルの屋上。吹きすさぶ風の中銀灰の髪を躍らせただ遠くにある光を見つめ続ける。
一歩、踏み出し、また一歩。
何をしようとしているかなんて、考えた事も無い。だが踏み出す足は止められなかった。
あと一歩、この足を前に進めれば体は空へと投げ出される。頭の中は真っ白で、何も思い浮かばない。そう、自ら死ぬ事を許されていないと言うことも頭には浮かんで来なかった。

「死ぬの?」

あまりにこの場に似つかわしくない無邪気な声が聞こえた。その声は楽しそうでもあり、悲しそうでもあるが振り返ろうとはしなかった。放っておいて欲しかった。

「だめだよ、君は死ねない。自分でよく分かってるはずだよね?」
「……誰だ」
「君を迎えに来たんだ。ライ」
「…………必要ない。僕はもう消える」
「君は死ねない」
「ライ卿」

そこで、現実に引き戻される。
白衣を着た女性が心配そうにこちらを覗き込んでいる顔が視界一杯に広がり、つい体を引く。

「大丈夫ですか? ライ卿」
「ああ……何も問題無い。メンテナンスの結果は?」
「少し脳波と感情値にムラが見られますが、特に問題はありません。薬もいつもどおりの量で構わないとのことです」
「そうか……」

白い体に張り付くコードを乱暴に剥がし、寝かされていた寝台から降りたライはなれた手つきで横に綺麗に畳まれている服に手を伸ばす。身に纏うは選ばれし騎士の服。黒と白、そして金で整えられた騎士服に袖を通したライは最後に一番下に畳まれている黒いマントを肩から掛け、金具を止める。
横でずっとライの様子を窺っていた女性の頬に朱が走る。銀灰の髪に、白い騎士服。そしてそれとは正反対の黒いマント。どこか背徳感を漂わせるこの騎士の顔は人形のように美しかった。

「報告書は、いつもどおりバトレー将軍に?」
「えッ! は、はい。そうです。ライ卿のメンテナンス一切はバトレー将軍の管轄ですので。何か問題でも?」
「いや、別に。仕事に戻る」
「お疲れ様でした」

皮肉な話だ。
自分を目覚めさせ、ご丁寧に改造まで施した恨むことはあるとしても感謝する事などありえない相手が自分の体を管理しているなんて。
足早に研究所を出たライは黒いマントを翻しそう遠くない宮殿へと足を向けた。
帝都ペンドラゴン本宮殿に足を踏み入れたライに早速声が掛かる。

「よ、お帰り。ライ」
「ジノか」
「……私もいる」
「アーニャ」

ライと同じ騎士服と違う色のマントを羽織った二人が黒いマントのライを見つけ親しげに話しかけてくる。同じ格好な所を見ると彼らもナイトオブラウンズらしいが、ライの顔が微笑みの形を作る事は無い。ただ無表情に二人の姿を青い目に映すだけでなんの感情もそこには浮かんではいなかった。

「うわ、相変わらず愛想も何も無い顔だな」
「……ジノは無駄に愛想がありすぎ」

そっけないライの態度にも慣れているのか、ナイトオブスリーであるジノはにこにこと人好きのする笑顔のまま素早くライの背後に回りこみ、その肩に自分の腕を回し引き寄せた。

「熱い、邪魔、重い」
「そう言うなって。コミュニケーションじゃないか」
「…………」

眉を潜め嫌そうな顔をしたライが横を向き、コミュニケーション過多のジノの腕から逃れようとするががっちりと肩を組まれ逃げ場を失う。
マント越しに伝わってくる体温に、吐き気がしそうだ。

「ちょっと暗すぎだぞ。いくらデュラハンとか裏切りの騎士とか言われてるからってお前まで暗くなってどうするんだよ」
「この性格は元々だ。いい加減離してくれないか。あまり気分が良くないから」
「記録……」

嫌そうな顔をして横を向くライと満面の笑顔を浮かべているジノの姿をアーニャが写真に収めた。ちなみに彼女の携帯に映るライの写真は全て同じ、嫌そうに横を向いている顔ばかりだった。

「わざわざニュースを届けに来た人間に言う台詞じゃないだろそれ。そういう可愛げの無い態度ばっかりしてると教えてやらないぞ」
「子供……」

写真の整理をするラウンズの最年少アーニャにぼそりと言われ、ジノは片眉を上げてアーニャを睨んだ後ニュースと言う言葉に反応し、横を向いていた顔を正面に直したライの耳元に唇を寄せ、自分も聞いたときに驚いたニュースを囁いた。

「ナンバーズが、ナイトオブラウンズに入るんだってさ」
「国是に反しないか」
「ラウンズに関しては関係ないみたいだな。ようは強ければ子供だろうが女だろうが関係無いってのが通説だし」
「ベアトリスは、嫌がってた」
「まあ、いい顔する奴はいないだろ」

ナンバーズがナイトオブラウンズに。その言葉にライはふと忘れかけていた友人の顔を思い出す。柩木スザク。イレヴンでありながら皇女騎士になった少年。真っ直ぐで、一生懸命な少年は自分の親しい友人の一人だった。
まさか、と首を横に振りライは思い出しかけていた少年の姿を打ち消し新たに入ってくるナンバーズ出身のラウンズの事を考える事を止めた。別に新たなラウンズが入ってこようが、ライの周りで何が変わるわけではない。ただいつもどおり血の匂いのする戦場を駆け瓦礫と死体の山を作るだけだ。

「それで、だ。そいつのお披露目式に私とトリスタンが相手をすることになった」
「だから?」
「だからってあのな。本当に興味無いのか? ナンバーズ出身のラウンズなんて異例中の異例、しかも皇帝陛下直々に任命したって話なのに」
「別に、増えようが減ろうが関係ない」
「……御前試合は、ラウンズ全員参加。ライ、あなたも」
「僕が行ったら嫌な顔する人間がいるだろう、二人ばかり」
「ベアトリスとヴァルトシュタイン卿の事か?」

ベアトリスとは皇帝付き主席秘書官ベアトリス・ファランクスの事。秘書官だけではなく特務総監を兼任する彼女はラウンズにとって皇帝の言葉を告げるものとして認識している。そしてもう一人、ヴァルトシュタインとは筆頭騎士、ナイトオブワンビスマルク・ヴァルトシュタインの事を指す。現在ブリタニア帝国最強と呼ばれるこの騎士は、十三番目の騎士であるライを認めていない所があるのをライ本人だけではなく、ジノや他のラウンズも気づいていた。

「ベアトリスは、いつもあんな感じ。ヴァルトシュタイン卿だって、御前試合なら文句は言わない。参加しない方が、嫌な顔する……」

フォローではないが、アーニャが言い、赤みがかった瞳でライの青い目を見上げる。いつもどこか遠くを見ているライの青い瞳はアーニャのお気に入りだったが、彼の目が真っ直ぐとアーニャの目を見返してきた事は一度も無い。

「そういうわけで、実質お前に拒否権は無し。参加決定!」
「……決定」
「……はあ」

まだ見ぬナンバーズ出身の新たなるラウンズに向け、ライは嫌悪感を示すため息を漏らす。いつもメンテナンスの後はこんな調子だった。気分が悪く、人に触れられる事を極度に嫌い、一人にしておいて欲しいと思い。しかしそう強く思えば思うほど、周りはその望みを叶えてはくれない。先週のメンテナンスの後もジノとアーニャに捕まり、先々週はノネット、その前は確かルキアーノだったか。
どんな人間か確認もせずに嫌悪感を示すのは流石に失礼すぎるとは思うが、先程から頭にちらつく懐かしい顔とジノの体から伝わってくる体温に段々と八つ当たりにも似た感情がライを支配し始めた。
お前さえ来なければ、こんなに嫌な気持ちにならなかったのにと。

――ナイトオブラウンズに、新たなる騎士が加わる。ナイトオブセブン、その名、そしてその姿をライが目にしラウンズになり初めて顔に感情を露にした表情をアーニャが記録する二日前の事。

拍手

PR
Clear