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warehouse 赴くままに乙女ゲーやハマったゲーム等のSSを期間限定で書き綴る予定です(゜Д゜)

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TIGER&BUNNY 夢練習04-バーナビー・ブルックス・Jr-

ジョン、実にジョン!


夢は夢でも男主夢です。多分この先暑苦しい越えたぐらいの表現はあると思いますので、苦手な方はご注意ください。




 世の中には崖っぷちヒーローだとか、スーパールーキーだとか、キングオブヒーローだとか色々な名がつけられているヒーローがいるが、その中でもこのヒーローは特殊中の特殊かもしれない。

 「面倒くさい」
 「そう言うなって」

 そして今、バーナビー・ブルックス・Jrの前で行われているやり取りは、どういい方に解釈しようとしても好意的にこの男を見るのは到底無理だった。
 トレーニングルームの椅子にだらしなく座る男の前にいるのは、自分のバディである鏑木・T・虎徹。何かをこの男に頼んでいるようだったが、頼まれている男の方は口を開けば「面倒くさい」「嫌だ」「断る」としか言わない。全力で否定の言葉を口にしているのに、虎徹の方はへらへらと笑うだけで何度も同じ頼みごとをしているようだった。
 バーナビーがこの男を好意的に見れないのは、この態度、このやる気のなさっぷりを隠すつもりのないこの男が、自分たちと同じヒーローの一人だと言う嫌な事実があるからだ。
 古賀当麻。シュテルンビルトの治安を守るヒーローの一人であり、それなりに長い間ヒーローを続けている男。そして現在『面倒くさい』の一言でランキング最下位をぶっちぎりで走り続ける男でもある。普通ならば必死になってポイントを取りに行くものと思うのだが、そんな事は彼にはどうでもいいことらしい。スポンサーは一体どう思っているのだろうか。

 「虎徹さん……なんなんですか、この人」
 「え、トーマだけど?」
 「そういうことを聞いてるんじゃありません」

 問うてみても虎徹は相変わらずだるそうに座っている男の態度に気分を害する風でもなく、人好きの笑顔を崩すこともなく今にも嘆息すらつきそうな男の顔をバーナビーの顔を見比べている。

 「てかトラさん、相棒いるんだから俺が手伝わなくてもいいだろ、別に」

 長い前髪鬱陶しそうにかきあげ、視界の端にバーナビーの姿を見て当麻が言う。自分のことも関係していることとなると、何かヒーローの仕事なのだろうか。

 「いや俺とお前じゃなくて、バニーとお前でやって欲しいんだわ」
 「は?」
 「は?」

 あまりの虎徹の言葉に、バーナビーはめまいを覚えた。




 Anything is better than nothing
            枯れ木も山のにぎわい。



 「……なんでこうなったんだよ」

 場所は第一層、ゴールドステージにある高層ビルの屋上。結局虎徹に強引に押し切られる形で二人は今ここにいた。当麻はよく知らないのだが、前から追っている犯罪者がこの辺に潜伏しているとの情報があったらしい。そのとき当麻もその場にいたのだが、正直覚えてない。そんな情報があるならHEROTVの中継が入りそうなものだが、前回この犯罪者を逃していること、そして情報が確実なものかどうか分からない状況で生中継とは出来ないと視聴率至上主義者アニエス・ジュベールの判断らしい。勿論、情報が確実なものと分かればすぐさま生中継をする準備を彼女は忘れない。

 「それはこっちの台詞です」

 思わず呟いた言葉に、当麻本人よりも隣に立つバーナビーが更に嫌そうに言い放つ。

 「はいはい、それはすいませんでしたね」

 嫌々なのはお互い様。その後言葉を交わすこともなくただ眼下に広がる景色を眺める。普段と変わらない町並みに気の合わない二人、会話が続くはずもない。
 虎徹が言うにはその情報を確実なものにするには当麻の能力が不可欠らしいのだが、バーナビーからすれば能力どころか戦っている姿すら見た事が無い。むしろ戦えるのかどうかすら怪しい。
 風の音だけがする中、当麻は地面に腰を下ろし、あぐらをかき頬杖をつきただ一点を見つめるだけで何かを探す様子も無い。それが、更にバーナビーを苛立たせる。

 「やる気あるんですか?」
 「無いけど」
 「……」

 嫌味のつもりで言ったのに、素直に「無い」と返されては次の言葉は出てこない。この男を見てると虎徹と言う男がいかに良心的で、ヒーローと言うものを理解し、前向きなのかを知る。そして心から思う、虎徹が自分のバディで本当に良かったと。この男がもしバディだったら色々なものが切れそうだ。
 「いい加減にしてください」喉まで言葉が出かけた時、ここに着いてから一歩も動かなかったが急に立ち上がり、ある一点を見つめ静かに、そして深く息を吸い込む。いきなりの動きにバーナビーもつられて同じ方向を見るが、自分の目には何も変わったものは見えない。ただいつもの町並みが広がっているだけだった。

 「……あー……なんで見つけるかな、俺」

 「何をと」言うより早く当麻はバーナビーの腕を掴み、ずいと自分の方へと引き寄せると同じ方向を、同じ角度で見せようとする。無遠慮な動きに非難の声を上げようとしたが、自分のすぐ近くにある当麻の顔を見て、その言葉も喉へと返ってしまう。

 「貴方、今能力を使っ……」
 「あの角のビルの四階の右から二番目の部屋に、いる」

 やる気の無い顔はどこへ行ったのか、真剣な顔でじっと一点を見つめていた当麻がズボンのポケットから携帯電話を取り出し画面も見ずに番号をすばやく押し、耳に当てる。かけた相手はワンコールで出たらしく、当麻が『見つけた』とだけ伝えると、未だ当麻に顔を寄せているバーナビーの耳にも受話器越しに興奮した声が聞こえてきた。

 『よくやったわ当麻! ケイン、メアリー! 生中継始めるわよ、準備して! あとヒーロー達に連絡! 当麻、バーナビーはそこに置いておいて。タイガーと一緒にスーツも届けさせるわ!』
 「はあ……。帰りたい」

 どこかで聞いたことのある台詞を呟いて、通話を終了させた当麻が携帯電話をたたみ再びズボンのポケットに突っ込むと、顔を寄せているバーナビーの方を見る。

 「残念。お守り続行みたいだな、『クソ』ハンサム。悪いけど恨むなら俺と組ませたトラさんを恨めよ」

 ヒーローになってこの方、面倒くさそうで無気力な顔しか記憶になかったバーナビーが初めて見た当麻の表情は、心底意地の悪そうににやにやと笑う、けれどどこか楽しそうな様子だった。

 「クソはいりません」
 「ハンサムは否定しないのかよ……」

 シュテルンビルトの長い一日が始まろうとしていた。

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