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warehouse 赴くままに乙女ゲーやハマったゲーム等のSSを期間限定で書き綴る予定です(゜Д゜)

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うたの☆プリンスさまっ♪-那月-

うたプリ練習作那月編。
うそみたいだろ……これでも四回書き直してるんだぜ、これ……
なっちゃん難しすぎて目から変な汁が出かけました。



 丸ごと彼女が愛しい。愛しすぎてどうにかなってしまいそうなぐらいに。

 「わあ、ハルちゃん可愛い~」

 彼女の部屋を訪れ、ドアが開き挨拶よりも先に抱きしめる。
 そうすると彼女はいつも、最初は抵抗しながらもすぐ大人しくなって自分の腕の中にすっぽりと収まる。まるでこの体が彼女を抱きしめるための大きさだと思えるぐらいに。

 「あ、あり、ありがとうございます。那月くん」

 抱きしめられながら、くぐもった声が聞こえてくるとつい抱きしめる腕をつい強くしてしまい、それに気づき慌てて力を緩める。可愛い可愛いこの少女は自分と『彼』を救ってくれた人であり、自分のパートナーでもあり、更に言えば恋人でもある。
 ここが学園だったのなら学園長が何処からとも無く現れそうなものだが今二人を縛るものはない。卒業オーディションを優勝と言う形で収め、絶対にばれないことと、仕事とプライベートを区別することを条件に二人の交際は認められている。が、もし学園長が二人の関係を認めないと言っても、那月は彼女の事を離すことはないだろう。

 「ああ、ごめんなさい! また力加減を間違えてしまいました。ハルちゃん、大丈夫? 痛くない?」

 力を緩められ、胸元から顔を上げた那月の可愛い恋人、七海春海が頬を赤く染めながら微笑む。那月に抱きしめられるのは嫌いじゃない、むしろ好きな方だがそれとこれに慣れるかどうかは別の話だ。

 「はい、大丈夫です。ちょっとびっくりしただけで……。おはようございます、那月くん」

 春歌の方も毎朝繰り返される那月の行動に慣れたとは言え、男性への免疫が極端に少ない身としては今でもこのスキンシップ過多気味の那月の挨拶代わりの抱擁は心拍数を上げるには十分だった。

 「うん。おはようハルちゃん。今日も可愛い、大好き」

 今さっき力加減がどうのと言っていたはずが、自分を見上げる照れた顔の春歌を見てしまうとリミッターが外れてしまうらしく、また力を強くして胸の中に閉じ込めてしまう。
 那月の愛情表現が凄まじいのは恋人になる前から分かっていたはずだが、頭で分かるのと実際やられるのではわけが違う。ぎゅうぎゅうと抱き締められ息苦しいやら恥ずかしいやら照れてしまうやら思考がどうしていいか分からなくなってしまう。

 「那月くん、く、苦しいです」

 さすがに息が止まるのは困るので、抱き締めている腕を軽く叩くと「ああ、そうでした!」と少し慌てた那月が腕を緩めてくれる。この最初に強く春歌を抱き締め、那月が力加減を間違え謝り、春歌と挨拶を交わし、また感極まった那月が力加減を忘れ春歌を抱き締める。これは二人の間で毎日の日課になりつつある。
 腕を春歌の腰へと移動させ、互いの顔を見て笑う。もう何度も繰り返してきたある意味様式美の二人の朝はゆっくりと過ぎていく。



******



 朝食を済ませ、ソファに座り他愛のない話をしながら那月との会話の中で思いついた言葉や、音を春歌は忘れない内にメモを取る。那月といるとこうしてメロディーが浮かぶことが多々ある、そんな春歌を那月は自分と話しているのに、と怒ることもなく嬉しそうににこにこと笑いながら見守る。普段の春歌も勿論可愛いが、こうしてメロディーを書いている春歌は更に可愛い。春歌は何をしても可愛い。
 だからこそ、抱き締めずにはいられない。

 「ハルちゃん、ぎゅー」
 「きゃ!」

 邪魔にならないようにと体を春歌の後ろへと滑り込ませ、腰に腕を回して抱き締めると、驚いた春歌が声を上げるが振りほどこうとはせず、ただ顔を赤くするだけだった。

 (那月くんの体、大きくて暖かい……)

 背中に密着する広い那月の体にメモをしていた手が止まる。背中から伝わる熱が心地よくて、つい体を倒そうとしてしまう。

 「ハルちゃん?」

 いつもなら驚いた後、こちらを見て照れ笑いを浮かべるのに今日はどうしたのだろう。こっちを見てくれない。
 心配になって声をかけてみると、我に戻った春歌が那月の顔を見上げ、口を開いた。

 「那月くんの体、やっぱり私とは違うんだなあって」
 「え?」

 一瞬何を言われているのかわからず那月は聞き返す。春歌は女性で、自分は男で。それは当然の事だと思うのだが、なぜか春歌はしみじみとそんなことを言う。

 「えっと、那月くん、雰囲気が優しいから忘れがちだったんですけど……。やっぱり私と違って肩幅広いなあ、いつも抱き締めてもらえて嬉しいなあ、寄りかかってみたいなあって」
 「ハルちゃん……」
 「す、すみません! 寄りかかりたいとかだめですよね、那月くん疲れちゃいますし。何言っているんだろう、私。ごめんなさい、忘れてくだ……」

 何を言い出すかと思ったら、そんなことを考えていたのか。春歌は那月が呆れたと思い謝罪の言葉を口にしたが、言われた那月は腰に回していた腕を引き寄せ、春歌の肩に顎を乗せその頬に自分の顔を摺り寄せた。柔らかい那月の髪を頬で感じた春歌が驚いて顔を向けると眼鏡の奥の緑色の優しい瞳がじっとこちらを見ていた。

 「那月くん?」
 「ハルちゃん、あんまり可愛いこと言うと。僕ハルちゃんを食べちゃいたくなるよ?」

 いつものゆったりとした話し方なのに、少し違う雰囲気の那月に春歌の心臓が跳ねる。視線を逸らしたいのに、逸らせない。何か言いたいのに口を開いても言葉が出てこない。
 真っ赤になりどうしていいか分からず助けを求めるように那月を見るが、返事をしない春歌に更に顔を寄せ赤くなっている頬に唇を落とす。

 「……うん、でもまだ我慢するよ」

 春歌の体を引き寄せ自分にもたれさせた那月が独り言のように呟く。

 「あの、那月くん今、なんて……」

 やっと声が出るまで落ち着いた春歌が今何か言った事を聞き返そうとしたが、那月はにこにこと笑うだけで春歌の問いには答えなかった。
 まだ、我慢できる。けれどその我慢がいつまで持つか、那月にも分からないが、それがそう遠く無い日に訪れることだけは、なんとなく分かった。

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