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warehouse 赴くままに乙女ゲーやハマったゲーム等のSSを期間限定で書き綴る予定です(゜Д゜)

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LOSTCOLORS―ラウンズ編06―

それぞれタイトルがあったはずなんですが思い出せません!


>>目次










今日は本当によくラウンズに会う日だ。ジノ、アーニャはいつもの事として、ルキアーノやビスマルクにまで遭遇するとは思わなかった。一番の驚きはスザクの存在だが。
いい加減諦めてくれいないものかとあまり人の寄り付かない物置として使われている一室へと滑り込んだライはシーツが掛けられているソファにそのまま腰を下ろす。掃除されていないのか、ライが腰を下ろすとふわりと埃が周囲を包み込んだ。
思えば朝から動きっぱなしだ。普段の自分なら考えられない。これも全て、スザクがラウンズになってからだ。だからと言ってスザクを責める気持ちは更々無いが、少し疲れてきたのは確かだ。
ここならば、自分がいることは気づかれまい。朝から動きっぱなしで研究所から渡された薬も今日はまだ飲んでいない。
ポケットから薬を入れたタブレットを取り出し、手馴れた手つきでカプセルを二つ出す。水は無いが、喉を通れば何とかなるだろうと手のひらに乗せたカプセルに視線を下ろした時、締め切っているはずの部屋に風が吹いた。
しかしライは驚かず薬を口に入れることは止めたが、立ち上がって声を上げたりはしない。

「いいのか、こんな所でふらふらしていて。誰かに見られたらどうする」
「う~ん、殺しちゃうかもね」
「いい迷惑だな」

いつの間にか隣に十歳ぐらいの少年が立っていた。金色の髪を自分の背丈を同じぐらいまで伸ばし紫色の瞳をした少年はライと同じく、黒いマントを羽織っている。ライの了承も取らず、隣に立っていた少年は同じくシーツの被せられたソファへ勢い良く腰を下ろすと、また埃が舞いきらきらと光に反射して光った。

「久しぶりなのにつれないね、ライは」
「毎晩毎晩人の部屋に来といて何がつれないだ」
「あれ、気づいてたんだ? だったら起きてくれればいいのに」
「『子供』の我がままに付き合う時間は無い」
「あはは、確かに君から見れば子供かもね。僕も、シャルルも」

楽しそうに笑い、床へと付かない足をゆらゆらと揺らしながら少年、現ギアス嚮団嚮主、V.V.は無邪気に笑う。その存在自体を知る人間は少ない。ライはその少ない人間の、一人だった。そしてライはV.V.が現皇帝、シャルルの双子の兄であることを知る唯一の人間でもある。

「用が無いなら早くどこかに行ってくれ。相手をする暇が無い」
「ナイトオブスリーとナイトオブシックス、それとナイトオブセブンが君を追ってるね。ずっと見てたよ」
「悪趣味だな……」

背もたれに体を預け、息苦しそうに天を見上げる。この締め切った空気が悪いのでも、埃が悪いのでもない。薬を飲んでいない弊害がライの体を襲う。神経電位接続に対応させるために手の加えられたライの体は、ガラスのように脆くなってしまっている。それ以前にバトレーに受けた強化手術や投薬もあり、ひびの入ったガラスの人形のようになってしまっていた。

「苦しいの?」
「分かってるなら、聞くな……」
「わあ、汗びっしょりだよ。早く薬飲まないとばらばらになっちゃうよ」

苦しそうにしているライとは正反対に、V.V.の声は楽しそうに弾んでいる。額にうっすらと汗を浮かべ荒い呼吸を繰り返し始めているライの横顔を、紫色の大きな瞳がじいと見つめ、あの日エリア11でこの少年を拾ってきた時の事を思い出す。自ら死を望みながら、契約に縛られ死ね無い少年。願いを叶える為望んで手に入れたはずの力なのに、最後の願いがその望みによって阻止されてしまう、かわいそうな少年。

「ナイトオブセブンに答えて上げないの? 僕は君と一緒に居たライだよって」
「…………」
「言ってあげないの? 全部知ってるんだよ、君がゼロを、ルルーシュをシャルルに突き出したって事」
「……」
「教えてあげないの? 君も、ギアスを持ってるってこと……」
「よく喋る口だな。少し閉じていろ」
「ふふ」

何度も髪をかきあげ苦しそうにするライの膝の上に上半身を乗せたV.V.が上目で苦しそうに歪むライの顔を見る。薬を飲む事に、まだ拒否反応を示していた。飲まなければ生きていけないのに、週に一度のメンテナンスをしないとどうなるか分からない体なのに、それでもライはすすんで薬を飲もうとはしない。自分が人間であることを確かめるように、この苦しさに耐え続ける。
ライを連れてV.V.が訪れたのは、ギアス嚮団の本拠地。そこで様々な検査を受け、彼が何者かをV.V.はここで知った。血の半分は自分と同じくブリタニア皇族の血、そしてもう半分は日本、エリア11。イレヴンの血。それだけでも驚いたのに、何と彼は強化手術を受けていた。誰がやったかは想像できる、バトレーだ。今はまだ彼をこちらに引き入れては居ないが、ジェレミアの調整の為そろそろ彼をこちらに引き入れる事も考えなければいけない。勿論、ライのメンテナンスをさせるつもりでもいる。彼には、まだ生きて働いてもらわなければならない。シャルルと交わした約束の為に。

「駄目だよ飲まないと」

手のひらに乗せられたままのカプセルを奪い取ったV.V.が、さっきとは違い冷たい声で言い放ち、顎を掴み無理矢理にライの口を開かせ、二つのカプセルを放り込む。すぐに吐き出さないように口を閉じさせ、恨めしそうに睨んでくるライに、無邪気な微笑を浮かべた。

「死なせてなんて、あげないよ」

愛らしい表情とは別に、その声は酷く冷めていた。




*******



ライの姿を追っていたジノ、スザク、アーニャは一度ラウンジへと引き返し、ライの到着を待つ。このままでは埒が明かないのと、アーニャが喉が渇いたと言うので休憩を取る事にした。
どかりと赤い三人がけのソファの中央に腰を下ろしたジノが足を広げだらしない体勢でなかなか捕まらないライに向けぶつぶつと恨み言を吐いている。一人がけのソファに腰を下ろしたアーニャは給仕を呼び、紅茶を頼む。そしてスザクはソファには座らず所在無さげにジノの座るソファの後ろに立つ。

「あいつ……ムキになりすぎだろ」
「それはジノも一緒」
「言うなよぉ」

携帯電話でブログを更新しながらもアーニャは突っ込む事を忘れない。ジノがここまでムキになってライを追わなければ、彼だって本気で雲隠れしなかっただろうに。放っておいて、相手が油断した時に捕まえればいいのに。思っても口にはせず、からからに渇いた喉を潤してくれる紅茶の到着をアーニャは待つ。
一方事の発端となったスザクは、ただ申し訳無さそうにジノとアーニャの顔を見比べるだけで、特に喋ろうとはしない。

「だけど、あれだけ本気で逃げるってことは、本当にスザクと知り合いだろ。知らない人間なら逃げる必要無いんだし」
「でも、彼は自分の事を知らないと言いました。自分が知ってるライなら、どうして他人の振りなんか……」
「うーん……。アーニャ、お前はどう思う?」
「……知らない。ライの考えてる事は、ライにしか分からない」

運ばれてきた紅茶のカップが到着するとブログの更新を一時中止し、ミルクをたっぷりといれ口を付ける。喉に流れていく香りと丁度いい熱さに少しだけ表情が和らいだ。
気分は怪盗でも追う探偵気分。ジノにもライがスザクと知り合いだと言う確信はライの逃げっぷりや態度を見ていて持ったが、旧知の仲ならばどうしてライが逃げているのかジノにも分からない。ナイトオブラウンズにいるのならば、後ろめたい事があるはずもないのに。むしろ、誇ってもいい事だと思う。ジノからすれば逃げる意味が分からない。
だがスザクには、少しだけだが彼が自分から逃げる事に心当たりがある。心当たりというと大仰かもしれないが、彼がいなくなったあの学園祭。テロリストが学園に侵入したあの時、テロリストは自殺したと発表されたが、実はその肝心の部分であるテロリスト達が自殺した場面を見ていない。見ていない、と言うより記憶に無いと言った方が正しいかもしれない。
スザクは、もしかしたらライがテロリストを倒したのではないかと思っている。どんな手段を用いたかは分からないし根拠も無いのだがただ漠然とそう思った。あともう一つの可能性としてはライがあの事件をきっかけに記憶を取り戻し、その戻った記憶がスザクや、アッシュフォード学園に人達に何らかの弊害が生じると考えて姿を消した。
スザクが今考えられる理由は、この二つ。逃げ回っていて、隠れてしまったライを見ていると後者の理由が当たっているような気はする。
でも――。

(僕と君は、友達だったはずだろう? 君は楽しそうに学園で過ごしてたし、学園祭実行委員長になったとき一生懸命頑張ってたじゃないか。僕と一緒に学園祭の準備をして、学園祭も回って……。君の事を何でも話せる友達だって思ってたのは、僕だけだったのか? 君にとって僕は……)
「あーあーあー、難しい顔するなよスザク。そんな顔しなくてもライはちゃんと捕まえてやるから」
「ジノじゃ、無理」
「こら、茶々入れるな。アーニャ」
「……ギャグ?」

持っていたカップを掲げ首を傾げるアーニャに即座に「違う」とボケたつもりはないと否定するが冷めた赤い瞳に疑わしげに見られるとそのつもりは無いのに罪悪感に襲われる。スザクも冗談だったのかと驚いた目で自分の顔を見ていた。まずい、これは話題を変えなければ全然面白くないギャグを言ったナイトオブスリーとして名前が広がってしまう。

「ラ、ライの事ならナイトオブテンが詳しいかもな。ストーカー並につけまわしてるっぽいし」
「……お茶に、茶々……」
「うるさい」
「……つまんない」
「あはは……」

執拗にジノの素で言ってしまった冗談を追求するアーニャの言葉を交わし、話題を変えるために言った言葉だったが、意外に当たってるのかもしれない。ライの御前試合の相手を務めたのはルキアーノで、実際ライの事をつけまわしていると言われても仕方ない行動を繰り返している。

「……でも、ルキアーノに聞いたって、教えてくれるわけない」
「気難しい人なんですか? ブラットリー卿は」
「気難しいって言うか、あれだな。プライドが高いって言うか、変わった趣味って言うか。アーニャの言うとおり、教えてはくれないだろうな。情報持ってるかどうかも謎だし」
「やっぱり直接本人に聞くしか無いのか……」
「それが一番だな。よし、あと五分待ってライが来なかったら捕まえに行くか!」

結局ライがラウンジを訪れる事は無く、五分経ち三人は再びライを捕まえる為に広すぎる本宮の中をたった一人の人間を探し出すために奔走する。
この時本当にルキアーノに会いに行っていたらライを捕まえられた事を後で知ったジノが悔しくて地団駄を踏む姿をアーニャが記録し、その日のブログの注目記事として話題になるのをまだ、ジノは知らない。

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