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warehouse 赴くままに乙女ゲーやハマったゲーム等のSSを期間限定で書き綴る予定です(゜Д゜)

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TIGER&BUNNY 夢練習05-バーナビー・ブルックス・Jr-

SSの書き方忘れてるのにさっき気づきました。どうしてこうなった。





 No man is without his faults
             欠点なき人はなし。



 『ボンジュール、ヒーロー達』
 いつものアニエスの言葉でHEROTVは始まる。ワイルドタイガー、バーナビー、ブルーローズ、スカイハイ、ロックバイソン、ファイヤーエンブレム、ドラゴンキッド、折紙サイクロンとやる気のない一名。九人のヒーロー達が犯罪者を捕まえるべくシュテルンビルトの街を駆け抜ける、はずだったのだが。

 「トラさんはゴールドのノースの牛の像から。いや、ロックバイソンについていけばいいんじゃ無くて、北側にあるクロノスフーズの。そう、牛の像。ブルーローズはイーストのヘリオスエナジーの鳥の像からシルバーに降下。着地したら目の前に折紙サイクロンがいると思うから、一緒に行動してくれ。それからスカイハイ――」

 ワイルドタイガーと共にスーツを届けられ、赤と白の兎を思わせるヒーロースーツに着替え、さあ自分も行こうと動き出そうとした時、まさかの待機命令がアニエスから出た。無視して自分も犯人確保に向かってもよかったが、相手がアニエスならば後が怖いので、バーナビーはまさに『いやいや』この場に待機をしている。気の合わない当麻と共に。
 嫌悪丸出しの視線を受けている当人と言えば、スーツに着替えるわけでもなく、普段着のまま未だ屋上の上でヒーロー同士が離れていても会話が出来るようにと用意された回線を使い次々に何か指示を出していた。かなりアバウトな方角と指定で。

 「まだメダイユ地区から出てないから大丈夫だとは思うけど、多分NEXTだな。どんなのかはまだ見えてない。一応見つけても仕掛けるのは二人以上揃った時に。ウサギはまだここにいてもらう」

 先程から一歩も動いてもいないのに、まるで全てが見えてる様に当麻は言う。何かしら能力を使っているのは分かるのだが、その正体がまだバーナビーには掴めない。何せこのやる気皆無の男が能力を使う所なんて、ヒーローになってから一度も見たことが無かったから。
 矢継ぎ早に指示を飛ばしやっと一呼吸つけたのか、視線は未だ先を見つめながら通信回線を開いたまま深く息を吐く。

 「だから面倒くさいって言ったのに……。ったくトラさんは相変わらず牛っていうとすぐロックバイソンかとか言うし、スカイハイはえらいとこ飛んでいくし折紙は見切れに命かけてるし……クソハンサムはこっち見てるし」

 ぼそぼそと愚痴を零すと開いたままの通信回線から誰かから文句が出たのか当麻は『はいはい、悪かった』と本気で悪いと思っては無い口調で表面だけの謝罪をし、こちらを見ているのか睨んでいるのかマスクのバーナビーを見る。

 「クソハンサムじゃありません、バーナビーです」
 「ああ、悪かったよウサギ」
 「貴方という人は……!!」

 先程の様子とは打って変わってこの悪意しか感じられない言葉に流石のバーナビーも堪忍袋の緒が切れそうになったのか語気が荒くなる。今の今まで一応とは言えヒーローの先輩だからと我慢してきたが、流石にここまで悪態つかれては怒るなと言う方が無理がある。しかし相手はライバルではあるが同じヒーローでもある。ここで怒鳴りあいなり殴り合いなりしても何かが変わるわけではないことはバーナビー自身が一番よく分かっているはずなのだが。
 未だ能力を使ったままの当麻の前髪の奥から鋭い目が覗くと、バーナビーは一瞬だけたじろく。何が、とははっきり言えないがこの目は怖い。当麻個人に抱いている嫌悪感とも、拒絶感とも違う本能での恐怖。

 「ウサギ、そこから一歩も動くなよ」

 悪意の言葉から一転、当麻の声と目が鋭くなる。まさかこちらに仕掛けてくるつもりなのか、いつでも能力が使えるようにバーナビーが身構えると、二人のいるビルに何かが向かってきているのが見えた。普通の人間では決してありえない程の跳躍力にすぐにそれがただの人間でないことは分かったバーナビーが名前に向けていた警戒態勢をそのままこちらに来ている何かに向けた。

 「ビンゴ。さあウサギ、ここから先はお前の仕事。犯人確保、頑張れよ」
 「は? 貴方何を言って……」
 『おいバニー! 犯人がそっちいったぞ! なんかやたらピョンピョン飛ぶ奴だから気をつけろよ!』
 当麻の言葉の意味が分からず聞き返そうとするバーナビーの疑問にワイルドタイガーの通信が割り込んで来た。こっちに来ている、犯人。
 ビルの上には気に食わない男と自分、そしてこちらに来る尋常ではない跳躍力の影。

 「犯人が何故こっちに……」
 「そりゃ俺がそういう風に仕向けたから」

 軽くいってのけて、手をひらひらと振り当麻はさっさと捕まえろと言わんばかりにバーナビーをこの場から追いやろうとする。向かってきていた影は、疲れたのか二人のいる屋上から見下ろせるビルに着地し、能力が切れたのか膝に手をつき荒い呼吸を繰り返しているように見えた。

 「ほら、確保確保」
 「…………」

 まるでこうなることが最初から分かっていた風な口調の当麻に色々と疑問を残しつつも、バーナビーは屋上から飛び降り、息切れしている犯人であろう男のビルへと飛び移ると、すぐさま能力を発動させ男を確保する。すると巨大なスクリーンに興奮したアナウンサーの声と共にバーナビー・ブルックス・Jr200ポイント! との文字と共に大きくその姿が映し出される。フルフェイスを被っていなかったら、誰も見たことの無いような困ったバーナビーの顔が見られたかもしれない。



******



 最後まで事の顛末が分からなかったバーナビーはトレーニングルームに戻ると同じく戻ってきていた虎徹、カリーナ、ホァン、キース、アントニオ、ネイサン、イワンに一体どういうことなのかを尋ねて回った。何事もすっきりさせないと気になる性格なのか絶対に答えないであろう本人を除きそれぞれに聞くと皆口を揃えて『あれが当麻だ』としか答えてはくれなかった。
 意図の見えない答えに憮然とするバーナビーを可哀想に思ったのか、彼のパートナーワイルドタイガーこと、虎徹だけが詳細を教えてくれた。

 「バニーを巻き込んだのは俺だしなぁ」

 と申し訳なさそうに先に言葉を口にした後、虎徹は語る。事の始まりと終わりを。

 「まずトーマの能力から説明した方が早いよな。あいつ、千里眼のNEXTなんだわ」
 「千里眼……ってあの、遠くを見れたり、感知できたりするやつですか?」
 「そうそう、さっすがバニーよく知ってるな」

 一つ、疑問が解けた。当麻が『見つけてしまった』だの『ビルの角の部屋にいる』だの言っていたのはその能力を使ってのことだった。潜伏する犯人を見つけるのには持って来いの能力ではあるとは思う。思うのだが。

 「まあ、この街全部見通せるかって言われたらそれは無理だって言ってたからな。ただアイツは勘がいいからこの辺だろうってとこに行って、能力を使って犯人を探し出したりするのが得意なんだよ。今回の犯人、潜伏してただろ? それ聞いてたからあいつに頼んだってわけだ」
 「それは分かります。でもどうして僕が彼のそばにいなければならなかったんですか?」
 「そりゃお前、あいつ戦えないから」
 「は?」

 ヒーローなのに戦えない? それは一体どういうことだ。いくら能力が使えるからとはいえ戦えないのにヒーローになれるのはおかしい。能力が優秀であるならば、外部協力と言う形で参加させることも出来たはずなのに。

 「戦えないってのはちょっと違うな。トーマは能力を二つ持ってる。一個はさっき言った千里眼。それとサイコキネシス」

 サイコキネシスにはバーナビーも思い当たる事がある。確か、市長の息子がその能力の持ち主であやうく部屋をぐちゃぐちゃにされかかったのだから。
 だがあれはまだ赤ん坊で制御できなかっただけで、使いようによっては十分犯人確保にも使える力だとは思う。しかも能力者としては稀な二つを持っているのだから、ならばなぜサイコキネシスの方も使わないのかとバーナビーの疑問が増えていく。

 「どっちも時間のリミットはない。それこそ一日だろうが一ヶ月だろうがあいつは能力を発現させっぱなしに出来る。ただし、その分使えない時間も増える。たとえば24時間千里眼の能力を使ったとすると、その次にトーマが千里眼なりサイコキネシスなり再び能力を発現させるには、発現させ続けた時間と同じだけ休まないと無理ってことだ。リキャストってやつだな」

 ああ、それで合点がいった。バーナビーと当麻が一緒にいた時間が二時間以上。その間当麻が能力を使いっぱなしだったとしたら、見つけて千里眼の能力を切ってもすぐにサイコキネシスの力は使えない。だから自分が護衛も兼ねて当麻と共に行動していたのだろう。未だに人選には疑問が残るが。

 「人の事そう簡単に喋るってのは感心しないよ。トラさん」
 「お、トーマ

 いつからそこにいたのか、トレーニングルームの扉に体を預け、腕を組んだ当麻が眠そうな顔をして虎徹とバーナビーの顔を見ていた。気配も感じさせない事に長けているのか、存在感が薄いのか全く気づかなかったバーナビーが驚いた表情を見せると、当麻は片眉を上げ皮肉そうな笑みだけを浮かべると、ゆっくりと二人の方へと歩いてくる。

 「なんだぁ、もしかしてトーマ。自分からバニーに今日の説明でもしようと思ったのか?」
 「……なんで俺が一々説明しなきゃなんないんだよ。俺がそんな面倒くさいことすると思ってんのかよ」
 (ん?)

 顔は皮肉な笑みを浮かべたままだが、頬が少しだけ赤くなっているのをバーナビーは見つけた。口ではぶっきらぼうに言いながらも、今期MVP確実だと言われているバーナビーに地味な仕事をさせてしまったことを少しは気にしているらしい。
 何を言っても柳に風な当麻が動揺している。

 「すみません、古賀さん。全然気づけなくて」
 「は? お、おいクソハンサムお前何言って……」
 「いえ。人生でもヒーローとしても先輩なのに僕には配慮が足りなかったなと思いまして。でも最初に説明してくれていたら、僕ももう少し態度を改めたと思いますよ?」
 「態度も何も別に俺は説明しに来たわけじゃな……」
 「いやあ、でも驚きました。僕もヒーローとして色々な能力を見てきましたが、まさか千里眼とサイコキネシス二つの能力を持っていたなんて。凄いですね!」
 「っ……お、おい。話を聞け! って、これなんの嫌がらせだ。おい!」
 「嫌がらせだなんてとんでもない。僕の本心ですよ」

 バーナビーが口を開く度に当麻の動揺が大きくなっていく。憎まれ口を叩いていた口はぱくぱくと動くだけで返す言葉が出てこない。
 バーナビーの顔を見ながら虎徹が苦笑しているが、当麻を助けるつもりはないらしく口元にある髭を掻いていた。 
 何を言っても利かないと思っていた男の弱点を、バーナビーは掴んだ。

 「なんだ、お前等いつの間に仲良くなったんだ?」
 「なってねえよ! どこ見たらそう見えるんだ!」
 「待ってください、古賀さん。僕、まだ貴方に言いたいことがあるんです」
 「言わなくていい! こっち来るな!」
 「……仲良しだろ、やっぱり」

 バーナビー自身気づいていないが、こんなに彼が自分から絡むのは当麻が初めてだった。

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